法科大学院では教えてくれない!?法務担当として身につけるべきスキル5選

5月16日、5月17日、5月19日、5月20日と司法試験を受験された受験生、お疲れ様でした。

毎年、試験結果を待たずに、就活に切り替える法科大学院修了生(ロー生)を多く見てきました。そんなロー生から社会人デビューが遅い、学部卒と比較すると実務経験がない事が漠然と不安だ、というご相談をよく頂きます。そんな不安を抱えたロー生には、ぜひベンチャー への就職を視野に入れて頂きたく、今回はそんなロー生向けにベンチャーで法務のキャリアを積むことのメリットについてお伝えします。

市場価値が高いのは、市場のニーズに対して「年齢×スキル×年収のバランス」が取れている人です。厳しい現状をお伝えすると、大学を卒業して法科大学院を修了、そこから司法試験を数回受験していると年齢は20代後半から30代前半の方が多いのではずです。社会人経験がないとなると、学部卒で法務経験がある方と比較した際、一般的には厳しいご評価になる傾向です。


今まで必死に勉強してきたのにも関わらず、このようなご評価だと非常に悔しいですよね。そんな悔しい思いを挽回するためには、しっかりと年齢に見合ったスキルを身に着ける事です。

そのためにスタートダッシュが必要な方もいるはず。そんな方向けに就職先にするべき環境をお伝えします。



(1)契約書の雛型作成

ベンチャーは、組織として成熟していないことが多いため、そもそも契約書の雛型がないところも多いです。そのため、契約書の「確認」だけではなく、ゼロベースで「雛型」の作成が必要なことも多く、そのため契約書作成スキルの向上が早くなりやすいです。法務として市場価値が高いのは、契約書の確認業務だけではなく、雛型の作成まで出来る人材です。



(2)法務の立ち上げが出来る

ベンチャーは、そもそも法務部が存在しなかったり、人事総務や経理財務の方が兼務していたりすることも多いため、ご自身が初めての法務スタッフということもあります。顧問弁護士と協力しながら、自分の判断で法務マターの処理をすることができるので非常に良い経験を積むことができます。

法務部長がいるような成熟した組織や大人数のですと、業務が細分化されていることもあり、業務範囲が狭まる傾向になります。ベンチャーですとより責任を持って仕事をしなければならない範囲が広くなるため、緊張感を持って仕事をする必要があり、スキルの成熟スピードがは速まります。



(3)ビジネスサイドとの関わりが持てる

ベンチャーは、大手に比べると経営者や事業部と一緒にプロジェクトを進めることも多く、いわゆる「ビジネスの理解度」が高まりやすいです。ビジネスサイドの動きが理解できると、法務としてどこを抑えて置くべきか、どこにリスクがあるのかという理解度が早まるはずです。

法的に問題のあるビジネススキームを、収益性を維持しつつ(もしくは最低限の収益率の悪化にとどめつつ)どのように修正することで適法性を高めることができるかを事業部と密にコミュニケーションをとりながら考えることが多いため非常にやりがいが持てます。プロジェクトのキックオフミーティングからビジネススキームの組成過程を追うことができるため、リアルタイムでリーガルチェックをすることが必要なために成長に繋がります。



(4)新しいビジネスモデルに携われる

ベンチャーは、新しいビジネスモデルを展開している企業も多いです。まだ世の中に事例がない場合も多く、法的解釈が難しいケースもあります。そういった環境で試行錯誤する経験は他者とのスキルの差別化に繋がります。司法試験に専念されていたため、ご年齢に対して社会人経験やスキルがない事に対してコンプレックスを感じています、という相談をよく頂きます。そういった方こそ、早期に成長できる新しいビジネスモデルの環境をおすすめします。



(5)IPO準備企業での法務

ベンチャーは、IPO準備企業が多いです。IPO準備企業での法務総務経験は非常におすすめです。特に株主総会関連のご経験ある若手は、転職市場に少ないので、そういったご経験があると市場価値が高い傾向にあります。株主総会などの運営業務は、総務の中でも比較的レベルが高い業務なので40代以降の方が担当するケースが多いのです。その業務を若手で担当出来る環境は非常い良いでしょう。



ロー生求人の立ち位置

ロー生対象の求人は、基本的には中途枠で採用になるケースが多いです。新卒採用に場合は、全体的なスケジュールが決まっており、春採用や秋採用の一括採用で入社日も決まっております。また、内定から承諾までの回答期限に猶予があるケースが多いです。

ただ、中途枠の場合は、選考スケジュールも決まっておらず、書類選考から内定まで、最短で1週間くらいで結果が出るような企業様もあります。その際の内定承諾の回答期限も、1週間前後が多く、仮に本日、書類選考がスタートした場合、トントンと選考が進んだら、6月上旬には入社をしているというケースも想定されます。新卒採用と違って非常にスピード感があるので、興味がある案件に積極的に応募をしましょう。

選考を受けようかどうか悩んでいるうちに、他の候補者で決まってしまうケースはよくある話です。逆に一社だけしか応募しておらず、その一社で内定が出て、内定を承諾するかを判断をしなければならないので、複数社受けながら決めたいという方はある程度選考スピードを揃える必要があります。HPや求人広告からの応募でも良いですが、そういったスケジュール調整を自身で行う必要があるため、エージェントを使うのが効果です。


補足的に法務の役割を

そもそも法務とはどんな役割を持つのでしょうか。
→「予防法務」「臨床法務」「戦略法務」3つの役割を持ちます。


(1)予防法務

将来において契約の当事者間などで法的な紛争が生じないよう、法律知識や法実務上のノウハウを駆使して事前に法的措置をとることです。契約書関連の業務は予防法務に含まれます。 「裁判沙汰」にならないための事前合意の厳密化と考えると理解しやすいです。


(2)臨床法務

臨床法務とは法的トラブルへの対応です。法務担当者が必ずしもすべてのリスクを回避できる訳でありません。取引先の倒産やクレームの発生といった問題が発生した場合には、裁判を含めた法的対応を行い、問題を解決することが求められます。

(3)戦略法務

戦略法務は企業経営上の重要な意思決定に参加し、企業の意思決定にかかわる法律事務を行うことが挙げられます。現地の競争法や会社法、裁判制度など調査・研究して海外での事業展開や企業の買収や合併(M&A)、新製品の開発などにあたり、法的リスクの分析や効果的な知的財産権の活用方法を提案することで、企業価値を高める意思決定のサポートする事です。


例えば、新たな業務提携を始める際に、法令・判例等を十分考慮して、相手方と交渉し業務提携契約を締結することは予防/戦略法務と、また、現実に業務提携を開始した後に相手方と紛争状態になった際にその解決を図ることは臨床法務と言います。


まずは予防法務の経験を積み、将来的には戦略法務までご経験が出来ると華があるキャリアと言えるでしょう。

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以上、いかがでしょうか?

市場価値が高い法務とは、どこの市場で戦うのかによって変わってきますが、間違いないのは、世の中には新しいビジネスモデルが生まれ、法改正も行われる中、そこにいち早く対応できる法務です。
そういった法務のキャリアを形成するには、ベンチャーは非常におすすめです。法務のキャリアでお悩みであれば、お気軽にご相談ください。